創立500年を誇る全寮制の男子学校『マトリカリア学園』
歴史あるこの学園は、都会から遠く離れた、深い深い森の大自然の中にひっそりと佇んでいる。
どこか神秘的で、近寄り難い。
けれど温かくて、優しい。
ある人はこう言った「私たちの目には見えないように、まるでこの世界から隔絶するように、透明なベールで学園全体が覆われているようだ」と。
◇
実家から電車で3時間。
ようやく辿り着いたマトリカリア学園。
オレ、エディー・ミシェルが今日から通う学園だ。
噂通りどこか不思議で、まるでお伽話にでも出てきそうだ。
肩にかけていた鞄からスマートフォンを取り出し、学園の建物全体が写るようにシャッターを切る。
「うん、綺麗に撮れた!」
メッセージアプリを起動して撮ったばかりの写真と「無事に着いたよ!」のメッセージを祖父へ送る。
すると「素敵な写真ありがとう。学園生活楽しんでね」とすぐに返事がきた。
きっとオレが無事に学園にたどり着けたのか気になって仕方がなかったのだろう。
「ありがとう!」とメッセージを送りスマートフォンの電源を切った。
目を閉じて、ゆっくり深呼吸をする。
するとふんわりと優しい風が頬を撫でた。
そして目を開いて、学園をじっと見つめる。
今日からここでオレの新しい生活が始まるんだ。
◇
「えーっとキャット?ミント寮?ってどこだ〜」
事前に学園から配布された地図を片手に、今日から入寮するキャットミント寮とやらを探してみるが、そもそも自分が今どこにいるのかさえわからなかった。
なんて言ったってこの学園、あまりにも広すぎるのだ。
全寮制の学校ということもあり、学園の敷地内に学生寮があるのだが、その学生寮でさえも全部で6つあるそうで…
正直どれがどれだかさっぱりわからない。
このまま歩き続ければたどり着くだろうか?いや、余計どこにいるかわからなくなって迷子になる予感しかしない(既に迷子)
そもそも周りに人がいなくて助けを求めたくてもできないのだ。
しかし、ずっとこのままでいるわけにもいかない。
「まあ、いっか!とりあえず進んでみよう!」
以前友人に言われたことがある「エディーはスーパーポジティブだよね」と。
オレはそれを褒め言葉として受け取っているけれど、何事も前向きに考えると意外と上手くいくものだ。
いつまでも引きずって考え込むよりずっといい。
そんなことを考えながら道を進んでいくと、遠くにオレと同じ制服を着た一人の生徒を見つけた。
彼ももしかしたらオレと同じ新入生かもしくは先輩か。
この機会を逃せば次いつ人に会えるかわからない。
オレは彼に駆け寄って声をかけることにした。
「あの、オレ新入生なんですけど、キャットミント寮の場所がわからなくて教えてほしいんですけど…」
すると彼はゆっくりとこちらに振り返った。
この時がオレとシャルルの最初の出会いだった。
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